Lektion 13 動詞の3基本形

動詞の3基本形

不定形過去基本形過去分詞が「動詞の3基本形」です。教科書の巻末に「主な不規則動詞の3基本形」を載せているので,随時参照して下さい。普通の教科書や辞書だと分離動詞や verstehen のような複合動詞はこのような一覧表には載っていません (これは英語でもそうですね。 understand の過去分詞は載ってません) が,この教科書では分離動詞等の複合動詞も掲載しているので,ぜひ活用して下さい。

規則動詞の3基本形

規則動詞の過去基本形動詞の語幹に –te をつけて作り,過去分詞動詞の語幹の前に ge–,後ろに –t をつけて作ります。例えば machen (英 make )であれば,不定形 machen から不定形の語尾 –en を除いた mach が語幹なので,これに –te をつけた machte が過去基本形,語幹 mach の前に ge–,後ろに –t をつけた gemacht が過去分詞です。語幹は変化しません

不規則動詞の3基本形

不規則動詞の過去基本形語尾のない語幹だけです。過去分詞は,動詞の語幹の前に ge–,後ろに –en をつけて作ります。不規則動詞は過去基本形で(または過去基本形と過去分詞の両方で)語幹の母音が変わります。英語の不規則動詞 drink の母音 i が過去形 drank では a に,過去分詞 drunk では u に変わるのと同じだと思って下さい。英語の drink にあたるドイツ語の動詞は trinken ですが,やはり不規則動詞で,過去基本形は trank,過去分詞は getrunken です。語幹の母音が英語と同じく iau と変化していますね。 母音がどう変わるかは,1つずつ覚えるしかないのですが,trinken のように英語と同じ語源の動詞は,英語と同じように変化します

不規則動詞の3基本形のパターン

不規則動詞の3基本形のパターンは,不定形過去基本形過去分詞で語幹の母音が全て異なる A—B—C型不定形過去分詞の語幹の母音が同じ A—B—A型過去基本形過去分詞の語幹の母音が同じ A—B—B型 の3種類です。ドイツ語の不規則動詞ては,不定形と過去基本形の語幹の母音は必ず異なります。したがって A—A—B型 とか,英語の cutput のような A—A—A型 はドイツ語にはありません。

A—B—C型の例:
 trinken – trank – getrunken (iau)
 sprechen – sprach – gesprochen (eao)

A—B—Aの例:
 kommen – kam – gekommen (oao)
 geben – gab – gegeben (eae)

A—B—Bの例:
 bleiben – blieb – geblieben (eiieie)
 fliegen – flog – geflogen (ieoo)

分離動詞の3基本形

分離動詞の3基本形は,元になっている動詞の3基本形に「前綴り」をつけて作ります。したがって,元の動詞が規則動詞の場合は,分離動詞も規則動詞元の動詞が不規則動詞なら,分離動詞も不規則動詞になります。

それでは上記の規則動詞 machenzu をつけた zu|machen (閉める)と,不規則動詞 trinkenaus をつけた aus|trinken (飲み干す) の3基本形を見ておきましょう。zu|machen規則動詞aus|trinken不規則動詞です。

分離動詞は,過去形でも分離しますが,過去分詞は常に1語です。分離動詞の過去分詞も分離しません

過去分詞にge- をつけない動詞

今まで見てきたように,規則変化でも,不規則変化でも,分離動詞でも,ドイツ語の過去分詞にはすべて ge– がついていました。ところが,この過去分詞のシンボルとも言うべき ge– を過去分詞につけない動詞があります。次の2つのグループに属する動詞です。以下の説明では,各語の赤字の部分は,その母音にアクセントがあることを示し,緑色は,アクセントを持たない前綴り(接頭辞)を示します。過去分詞につくgeもアクセントのない前綴りなので,緑色になります。

① アクセントのない前綴り be–, emp–, ent–, er–, ge–, ver–, zer– を持つ動詞

besuchen(訪問する)empfehlen(推薦する)entscheiden(決める)erwarten(期待する)gefallen(気に入る)verstehen(理解する)zerstren(破壊する) などは,動詞本体に前綴りがついた複合動詞ですが,分離動詞ではありません (分離動詞の前綴りには必ずアクセントがあります)。英語の understand (stand に前綴り under がついたもの)と同じ種類の動詞だと思って下さい。これらの前綴りがついた動詞のアクセントは常に動詞本体にあります

それでは,規則動詞 besuchen と不規則動詞 verstehen を例として,詳しく見てみましょう。

besuchen
besuchen (訪問する)は,suchen(捜す)という規則動詞にアクセントのない前綴り be– がついたものです。suchenの過去分詞は gesucht ですが,besuchen の過去分詞は,この gesucht から ge– を取った sucht に be– をつけた besucht になります。
besuchen → besucht (suchen → gesucht)

verstehen
verstehen(理解する)は,stehen(立っている)という不規則動詞にアクセントのない前綴り ver– がついたものです。stehen の過去分詞は gestanden ですが,verstehen の過去分詞は,この gestanden から ge– を取った standenにver– をつけた verstanden になります。
verstehen → verstanden (stehen → gestanden)

② –ieren で終わる動詞

ieren は外国語の動詞からドイツ語の動詞を作る語尾です。ですから –ieren で終わる動詞は,英語などの知識から意味がすぐわかります。例えば studieren(専攻する),telefonieren(電話で話す), diskutieren(議論する) などですね。これらの動詞はすべて規則動詞で,アクセントは必ず語末の –ierenにあります。規則動詞なので,過去分詞は本来は[get]という形になるはずですが,–ieren で終わる動詞の場合は,過去分詞に ge– がつかず,–iert になります。
studieren → studiert

この2つのグループに共通するのは,最初の音節にアクセントがない動詞ということです。ドイツ語は []というリズムの言語なので,[]とアクセントのない音節が続くことを嫌います。過去分詞の ge– にはアクセントがないので,アクセントのない前綴り be– がついた besuchen (besuchen ) に ge– をつけてbegesucht (begesucht ) にすると,ドイツ語が嫌いな[]になってしまいます。それを避けるために,これらの動詞の過去分詞には ge– をつけないのです。

動詞の3基本形のQ&A

Q
動詞が規則動詞と不規則動詞のどっちかということは暗記するしかないんですよね?
A

そうです。でも英語とほぼ同じ形をしている動詞の場合は,英語が不規則動詞だったらドイツ語も不規則動詞で,しかもたいてい同じように母音が変わります。sing / singen(歌う)の例を見てみましょう。英語もドイツ語も語幹の母音が i – a – u と変化しています。

英:sing – sang – sung
独:singen – sang – gesungen

それから「暗記するしかない」という件ですが,不規則動詞の一覧表を最初から丸暗記したりする必要はありません。重要な,よく使われる不規則動詞は,これからの練習の中で繰り返し出て来るので自然に覚えられるはずです。

Q
過去分詞についてなのですが,essen が gegessen になる理由を教えてください。
A

これは答えようがありません(^^;)。不規則動詞なので,そう決まっているからとしか言えません。もちろん不規則動詞でも普通はアクセントのある母音の音が変わるだけで,他の部分はそのままですが,少数ながら子音も変化する不規則動詞があります。例えば stehen(立っている)の過去分詞は gestanden で,h が nd になります。essen が gegessen になるのも確かに変ですが,そういうものだと思って覚えて下さい。英語だって go の過去形の wentgo とは一文字も共通点がありません。ドイツ語でも英語の be に当たる sein の過去分詞は gewesen で,essen → gegessen よりも更に不思議ですが,こういう変な変化をするのはよく使う動詞なので,ぜひ覚えてほしいと思います。

Q
schreiben(書く)の過去分詞は geschrieben だと習いましたが,赤字部分の発音が変わるのはなぜですか?
A

不規則動詞は「不定形―過去基本形―過去分詞」のうち,少なくとも1カ所で必ず語幹の母音の音が変わります。英語でもそうですね。例えば drink – drank – drunk とか come – came – come を思い出して下さい。これはゲルマン語の特徴で,母音交替(Ablaut)と呼ばれる現象です。ドイツ語の trinken は trinken – trank – getrunken で,英語の drink と同じく i–a–u と変わります。このように英語とドイツ語で同じ形の動詞は同じように音が変わりますから覚えておいて下さい。kommen の過去分詞は gekommen なので変化していないように見えますが,過去基本形は kam ですから,o–a–o という変化なのです。英語には put–put–put とか cut–cut–cut のように全く変化しない不規則動詞がありますが,ドイツ語にはありません。必ず1カ所は音が変わります。schreiben は schreiben – schrieb– geschrieben と変化する ei–ie–ie型です。

Q
中学生のころはスーッと頭に入っていた動詞の過去分詞形(英語)も今では,覚えることを脳が拒んでいるみたいです。繰り返しによって覚えるのが最善で最短の方法なのでしょうか? 何かいい方法はないですか?
A

毎日5回ずつくらい gehen – ging – gegangen! のように唱えれば,1週間くらいで全部覚えられそうですが,丸暗記を頭が拒否しているのなら,よく使う動詞から文の形で覚えるといいかもしれません。その際には教科書や辞書に書いてある例文ではなく,自分の実体験に基づいた文を作って覚えるようにすれば,その文を過去の経験と共に印象深く覚えられます。

Q
分離動詞の過去分詞は,〜|… っていう分離動詞だったら,〜 はそのままで,… を過去分詞にしてくっつければいいんですか?
A

その通りです。