Lektion 14 過去形

英語と違ってドイツ語の過去形には人称変化があります。人称変化する前の形が Lektion 13 で学んだ「過去基本形」です。

過去人称変化

過去人称変化は,「過去基本形」に次のような語尾をつけます。

この表を見るとわかるように,現在人称変化と異なるところは2か所だけです。すなわち

 ① 主語が ich のときの語尾 –e がない。
 ② 主語が3人称単数のときの語尾 –t がない。

したがって,ich と3人称単数の人称変化形は同じ形(=過去基本形そのまま)になります。 実はこの過去人称変化の語尾 (ichと3人称が同じ形で語尾なし,あとは現在人称変化と同じ) は,話法の助動詞の人称変化語尾と全く同じです。つまり新しく覚えることは何もありません。

過去形の例文

 Die Prinzessin kaufte den Spiegel.
  お姫様はその鏡を買いました。
 Gestern hatten wir eine Prüfung.
  昨日は試験があった。
 Wo warst du gestern Abend?
  君は昨晩どこにいたの?
 Damals konnte er nicht schwimmen.
  当時彼は泳げなかった。
 Sie machte die Tür zu.*
  彼女はドアを閉めた。
zu|machenは分離動詞です。分離動詞は過去形でも分離します。

過去形と現在完了形の使い分け

ドイツ語では単なる過去の出来事にも現在完了形を使います。例えば「私は昨日靴を買いました。」とか「彼は先週東京へ行きました。」のように,英語なら過去形で表現する文も,ドイツ語では現在完了形にします。

英語の現在完了が表わす「継続」「経験」「完了」「結果」のうち,「継続」はドイツ語では現在形を使いますが,「経験」「完了」「結果」には,ドイツ語でも現在完了形を使います。それに加えて,ドイツ語の現在完了形には「単なる過去」を表わす用法もあるのです。

過去形は主に書き言葉で用いられ,話し言葉では現在完了形を使います。物語や小説などの現在と関係のないフィクションの世界では過去形,現在と関係する日常会話やメールでは,過去を表現するのに現在完了形を用いる,という使い分けです。

だからみなさんが自分で過去形で話したり,書いたりすることはほぼないので,がんばって過去形を覚える必要はありません。物語等で過去形が出てきたときに,過去形になっている動詞の不定形(意味)が分かれば大丈夫です。

ただし,以下の動詞・助動詞は会話でも過去形が使われるので,過去形もしっかり覚えておきましょう。特に重要なのは話法の助動詞とhaben, sein です。

《主に過去形が用いられる助動詞》
 können, dürfen, müssen, wollen, sollen, werden*
* werden は受動の助動詞 (→教科書S.48) です。

《過去形もよく用いられる動詞》
 denken 思う,geben 与える,haben 持っている,sein …である,wissen 知っている