並列接続詞と従属接続詞
並列接続詞
文と文を対等な関係で結ぶのが「並列接続詞」です。まずは und(英 and ),aber(英 but ),oder(英 or )の3つを覚えておきましょう。並列接続詞は文の語順に影響しません。次の und で結ばれた文では,どちらの文も動詞は2番目にあることを確認して下さい。

従属接続詞
2つの文を対等な関係ではなく,一方を他方に従属させる形で結びつける接続詞が「従属接続詞」です。「従属させる」というのは,一方の文がもう一方の文の目的語になる場合(例えば英語の I know that he bought a car. の that he bought a car は know の目的語)や,一方の文が他方の文に条件や理由を付加している場合(英語の Tom won’t come because he is sick. の because he is sick は,トムが来ない理由の説明)です。従属接続詞で始まり,主文(英文法の「主節」)を補う形で使われる文を副文(英文法の「従属節」)といいます。つまり主文がメインで,副文がサブという位置づけです。
副文の語順
副文では動詞の定形は文末に置かれます。従属接続詞と文末の動詞の定形で枠構造を作ります。主文と副文はコンマで区切ります。Ich wusste nicht, dass er in Rom wohnt.(私は彼がローマに住んでいることを知らなかった)という文で確認して下さい。

★ ドイツ語には英語のような「時制の一致」はないので,上記の例文では,主文の動詞が過去形 (wusste),副文の動詞は現在形 (wohnt) になっていることに注意して下さい。
▶ wusste は wissen(知っている)の過去形です。wissen は話法の助動詞と同じように人称変化します。教科書のS.29で確認しましょう。
主な従属接続詞
よく使われる従属接続詞を例文と共に見てみましょう。副文の動詞の定形は文末です。
■ dass …ということ (英 that )
Wissen Sie, dass er nach Europa fährt?
彼がヨーロッパへ行くのを知ってますか?
■ obwohl …にもかかわらず (英 although )
Er schläft noch, obwohl es schon Mittag ist.
彼はまだ寝ている,もうお昼なのに。
■ weil …なので (英 because )
Er kommt heute nicht, weil er krank ist.
彼は今日は来ません。病気なのです。
■ wenn もし…ならば (英 if )
Was machen Sie, wenn er nicht kommt?
もし彼が来なかったら,どうするのですか?
★ 日本語では「もし…ならば」を先に言いますが,ドイツ語の疑問文は,疑問詞か動詞で始める必要があるので,疑問文では wenn で始まる副文を前に置くことはできません。
★ 疑問文でなければ,副文を主文の前に置くこともできます。 副文を主文の前に置くと,主文の動詞の定形は副文の直後に置かれます。副文全体が1つの文成分と見なされ,1番目とカウントされるので,主文の定形が2番目(=副文の直後)に置かれるのです。Wenn das Wetter schön ist, spiele ich Tennis. (もし天気が良かったら,僕はテニスをします)という文で確認しましょう。

■ als …したとき (英 when, as )
Als sie 10 Jahre alt war, kam sie nach Japan.
10歳のときに彼女は日本に来た。
■ während …している間に (英 during )
Während sie eine Mail schreibt, kocht er Kaffee.
彼女がメールを書いている間に,彼はコーヒーをいれる。
■ da …なので (英 as )
Da das Wetter schlecht ist, bleibt er den ganzen Tag zu Hause.
天気が悪いので,彼は一日中家にいる。
▶ 聞き手が既に知っている理由を挙げるときには da を,聞き手が知らない理由の場合は weil を使います。weil の文は新しい情報なので,ふつう主文の後に置かれます。
間接疑問文
間接疑問文は疑問詞を従属接続詞とする副文です。疑問詞と文末の動詞の定形で枠構造になります。
Er weiß nicht, wann sie nach Paris fährt.
彼女がいつパリに行くのか,彼は知らない。
▶ Wann fährt sie nach Paris?(いつ彼女はパリに行くの?)という疑問文が Er weiß nicht.(彼は知らない)の目的語になっています。疑問詞 wann が従属接続詞として使われています。
★ 疑問詞のない疑問文を間接疑問文にする場合は英語の whether や if に当たる ob(…かどうか)という従属接続詞を使います。
Er fragt mich, ob sie noch in Japan ist.
彼女がまだ日本にいるかどうか彼は私に尋ねる。
▶ Ist sie noch in Japan?(彼女はまだ日本にいるの?)という疑問文が Er fragt mich.(彼は私に尋ねる)の目的語になっています。元の疑問文には疑問詞がないので, ob が従属接続詞として使われています。
助動詞,現在完了,分離動詞を含む副文
分離動詞、助動詞,現在完了,分離動詞を含む副文では元々2番目にあった定形が文末に置かれます。
■ 助動詞構文
Niemand weiß, ob er heute kommen kann.
彼が今日来れるかどうか誰も知らない。
< Er kann heute kommen.
▶ 元々文末にあった本動詞 kommen の後に kann が置かれます。
■ 現在完了の文
Ich habe Magenschmerzen, weil ich zu viel gegessen habe.
食べすぎたので胃が痛い。
< Ich habe zu viel gegessen.
▶ 元々文末にあった過去分詞 gegessen の後に habe が置かれます。
■ 分離動詞の文
Sie wusste nicht, dass der Zug um 2 Uhr abfährt.
彼女はその列車が2時発だと知らなかった。
< Der Zug fährt um 2 Uhr ab.
▶ 分離動詞は副文では分離しません。元々文末にあった分離前つづり ab の後に fährt が置かれ,1語で書かれます。
従属接続詞と副文のQ&A
- Qdass は英語の that のように省略できますか? 教科書S.40「副文の語順」にある例文 Ich wusste nicht, dass sie in Deutschland wohnt.(私は彼女がドイツに住んでいることを知らなかった)についてですが,この文を英語で書くと,I didn’t know (that) she lived in Germany.となります。英語の場合「dass」にあたる「that」は省略できますが,ドイツ語でも省略できるのでしょうか?
- A
英語の that は基本的に無条件で省略できますが,ドイツ語の dass は省略できません。ただし口語では glauben(英 believe ),denken(英 think ), sagen(英 say )などは dass なしで使うことができます。今回の質問にあった wissen の場合は dass は必ず必要です。
glauben を使った例で説明します。なお,glauben は英語の believe なので「信じる」という意味でも使いますが,「私は…と思う」と言うときは英語の think に当たる denken よりも glauben の方をよく使います。だから英語の I think, … は,ドイツ語では Ich glaube, … だと覚えましょう。
「私は彼は病気だと思う。」は次の2通りの言い方ができます。
1a) Ich glaube, dass er krank ist.
1b) Ich glaube, er ist krank.気をつけてほしいのは「dass を省略するのではない」ということです。1a)の文で dass を省略すると
1a’) Ich glaube, er krank ist.
になりますが,これは非文(文法的に成り立たない文)です。dass を使わない場合は副文にならないので動詞は文末ではなく,第2位に置かれて 1b)の文になります。実は 1c) Er ist krank, glaube ich. 「彼は病気なんだと僕は思う。」のように ich glaube を後から追加することもできます。つまり1a),1b),1c) の文で言いたいことの中心は ich glaube ではなく,Er ist krank.であって ich glaube は軽く添えられたような位置づけなので dass を使わない言い方ができるのでしょう。
Ich glaube nicht, … のような否定形では dass は必ず必要です。今度は「私はそう思わない」という部分に重点が置かれるからです。
まとめ
・口語では dass を使わない言い方ができる動詞もある。全ての動詞ではなく,glauben, denken, sagen などの一部の動詞のみ。
・dass を使わない場合は語順が変わる。副文ではないので動詞は2番目に置く。
・否定文では dass が必須。
- Qリスニングの演習で 「das」と「dass」の違いが分かりません。どうすれば聞き分けられますか?
- A
「das」と「dass」の発音は全く同じです。だから単語だけで聞き分けることはできません。ただし「das」と「dass」は使い方が違うので,文全体で判断すれば確実に区別できます。dass の方が出現頻度が低く,見分け方が簡単なので,以下では dass の見分け方を説明します。
dass は weil などと同じ従属接続詞なので,dass の後には主語・動詞を含む文が来ます。主語は dass の直後に置かれ,動詞(または助動詞)の定形(=主語に合わせて人称変化した形)は文末です。ですから[ダス]という音の単語の後に文があって,その文の動詞が文末にあれば,その[ダス]は dass です。