Lektion 2 動詞の現在人称変化(2)

不規則動詞の人称変化

規則動詞では,変化するのは語尾だけで語幹は変化しませんが,不規則動詞は語幹も変化します。ただし語幹が変化するのは3人称単数が主語の場合と du が主語の場合だけです。人称語尾は規則動詞と同じです。網掛け部分は常に同じ形(=不定形)になります。

1) 語幹のe が i(e) に変わる動詞 (sprechen型の不規則動詞)

sprechen(話す)は、主語が3人称単数、あるいは du の場合に語幹の ei に変わり,er spricht / du sprichstとなります。このグループに属する動詞を本サイトでは「sprechen型の不規則動詞」と呼びます。

語幹の e が i に変わるのは主語が3人称単数か du の場合だけです。
–e, –t, –st などの人称語尾は規則変化動詞と同じで,この表で網かけになっている部分は常に同じ形(=不定形)になります。
主語が ihr のときの人称語尾は3人称単数と同じ –t ですが,ihr は規則変化です(語幹の ei に変わりません)。
sprechen型の不規則動詞には,他に essen(食べる),geben(与える),lesen(読む),sehen(見る)などがあります。
lesen と sehen は,er liest / du liest,er sieht / du siehst のように eie に変わります。
  *lesen は語幹が -s で終わるので主語が du のときの人称語尾が -t になります。

 Sprechen Sie Deutsch?
  あなたはドイツ語を話しますか? (規則変化)
 Er spricht Esperanto.
  彼はエスペラントを話します。(e→i
 Ich esse gern Würste.   
  私はソーセージが好きです。(規則変化)
 Was isst sie gern? 
  彼女は何を食べるのが好きなの?(e→i
 Lest ihr gern Krimis?
  君たちはミステリーを読むの好き?(規則変化)
 Er liest gern Kafka. 
  彼はカフカを愛読しています。(e→ie
 Siehst du gern Filme?
  君は映画観るの好き?(e→ie

2) 語幹のa が ä に変わる動詞 (fahren型の不規則動詞)

fahren(乗り物で行く)は、主語が3人称単数、あるいは du の場合に語幹の a が ä に変わり、er fährt / du fährst となります。このグループに属する動詞を本サイトでは「fahren型の不規則動詞」と呼びます。

語幹の a が に変わるのは主語が3人称単数か du の場合だけです。
–e, –t, –st などの人称語尾は規則変化動詞と同じで,この表で網かけになっている部分は常に同じ形(=不定形)になります。
主語が ihr のときの人称語尾は3人称単数と同じ –t ですが,ihr は規則変化です(語幹の a に変わりません)。
fahren型の不規則動詞には,他に gefallen(気に入る),schlafen(眠る),tragen(身につける)などがあります。

 Wir fahren nach Berlin.
  私たちはベルリンへ行きます。(規則変化)
 Fhrst du auch nach Berlin?
  君もベルリンへ行くの?(a→ä
 Wie lange schlaft ihr?
  君たちはどのくらい長く眠るの?(規則変化)
 Schlft er nur 3 Stunden?
  彼は3時間しか眠らないの?(a→ä
 Trgt er immer eine Brille?
  彼はいつもメガネをかけてるの?(a→ä

3) 上記のパターンに当てはまらない不規則動詞:habenとsein

① haben
 haben は英語の have にあたる動詞です。主語が3人称単数,あるいは du の場合に語幹の b がなくなっ て,er hat / du hastとなります。

語幹の b がなくなるのは主語が3人称単数か du の場合だけです。
–e, –t, –st などの人称語尾は,規則変化動詞と同じで,この表で網かけになっている部分は常に同じ形(=不定形)になります。
主語が ihr のときの人称語尾は3人称単数と同じ –t ですが,ihr は規則変化(語幹の b はそのまま)です。

 Ich habe einen Bruder.
  私には弟がいます。(規則変化)
 Hast du heute Zeit?
  君は今日時間ある? (語幹のbがなくなる)
 Er hat ein Auto.  
  彼は車を持ってます。(語幹のbがなくなる

② sein
 sein は英語の be にあたる動詞です。英語の be と同じく非常に不規則に変化しますが,とても重要で,よく使う動詞なので必ず覚えて下さい。

他の不規則動詞とは違って,全ての人称が不規則に変化します。
規則動詞の場合と同様に網掛けの部分は常に同じ形になります(ただし≠不定形)。

 Ich bin Student.
  僕は学生です。(不規則変化)
 Er ist sehr groß.
  彼はとても背が高い。(不規則変化)
 Sind Sie müde?
  お疲れですか?(不規則変化)

*英語なら I am a student. というように,不定冠詞のa がつきますが,ドイツ語では身分,職業,国籍などを言うときには不定冠詞はつけません。例:Ich bin Japaner. (私は日本人です), Er ist Arzt. (彼は医者です)

不規則動詞の現在人称変化のQ&A

Q
主語が er や du のときに不規則に変化する動詞は,出会ったそのつど覚えていくしかないんですか? 何か見分ける特徴はないですか?
A

基本的なパターンは 1) e→i(または e→ie)と 2) a→ä の2つだけなので,不規則になる可能性があるのはアクセントのある母音が e か a の動詞だけです。ただし e や a を含む動詞が全て不規則になるのではなく,大部分は(例えば machen のような)規則動詞です。不規則変化するのは e や a を含む動詞の一部で,数は多くないので,出てくるたびに地道に覚えましょう。

Q
不規則動詞の語幹の e は duとer/es/sie に対して i になるということですが,語幹が ei の場合の e も i に変わるのでしょうか?
A

いいえ,変わりません。ei は2重母音(=1つの母音)なので,e と i に分解はできません。また,語幹に e を持つ動詞がすべて不規則動詞というわけではありません。不規則動詞は出てくる度に指摘します。

Q
規則動詞と不規則動詞があるのは何か歴史的な背景があるからですか?
A

文法はその言語を体系的に整理するために後から作られたものです。いろんな変化をする動詞の中で,たまたま同じ変化をする動詞の数が多かったので,それを「規則変化」とか「規則動詞」と名付けたのです。どの言語でも「不規則動詞」と呼ばれる動詞は使用頻度の高い動詞なので,もしかしたら元々は他の動詞と同じ変化だったのが,使われているうちに別の変化に変わったという可能性もありますが,おそらく最初から他の動詞とは違う変化だったと考えられます(ゲルマン祖語とかインドヨーロッパ祖語は存在が推定されていますが,文献が残ってないので,最初の形がどうだったのかは分かりません)。「不規則変化」というと無原則に変化するイメージがありますが,もちろんそうではなく,いわゆる「不規則動詞」も実は規則的に変化します。ただし,その変化のしかたが多くの動詞とは異なるので,便宜上「不規則動詞」と呼ばれているのです。ちなみに「規則動詞」「不規則動詞」は,学校文法(学習者向け文法)での用語で,言語学では「弱変化動詞」「強変化動詞」という術語を使います。

新語のように後から作られた動詞は全部規則動詞です。後から半ば人工的に作る動詞を不規則変化にする理由がないからです。ドイツ語の例だと「…ieren」という語尾をつけて外国語からドイツ語の動詞を作ることができますが,こうして作られた動詞はすべて規則動詞です。 なお,母語話者はその言語の文法や変化表を暗記して言語を習得するのではなく,日々その言語に触れ,自分でも使いながら自然に獲得していきます。だから母語話者はどの動詞が規則動詞で,どの動詞が不規則動詞かは考えません。これは私たちが日本語を使うときに「この動詞はナ行変格活用だから…」などと考えないのと同じです。

Q
規則動詞と不規則動詞の見分け方を教えて下さい。ある程度不規則動詞を暗記した上で,それ以外が規則動詞という見分け方しかないですか?
A

残念ながらそうですね。英語の場合と同じです。でも教科書の巻末の不規則動詞を暗記する必要はありません。重要な(覚えるべき)動詞は何度も出てくるので自然に覚えます。そのためには Eva のテクストを何度も音読したり,何か別のことをしながら Eva の音声を流したりして,ドイツ語にたくさん触れて下さい。

Q
tragen の意味は教科書には「身につけている」と書いてありますが,例えば靴は「履く」,服は「着る」のように日本語では動詞が変わるのに,ドイツ語では全て tragen を使うということですか?
A

そうです。ドイツ語では身につけるものは全て tragen が使えます。靴,服だけでなく,ズボン,スカート,水着,帽子,手袋,メガネ,コンタクトレンズ,勲章,指輪なども tragen です。

Q
sein の人称変化についての質問です。”sein” という不定形そのままの形は,どんな場面で使われるのでしょうか? 同じく不規則変化する “haben” は,”wir” などが主語の時に不定形そのままで使われますが,”sein” は学んだ限りだと,どんな主語でも語尾が変化していて,不定形はいつ使われるのだろう,と思いました。
A

規則動詞や sein 以外の不規則動詞では,主語が wir, Sie, sie のときの人称語尾が不定形と同じ -en になりますが,これらはあくまで「定形(=人称変化形)」であって,不定形ではありません(不定形は主語に合わせて人称変化しない形です)。不定形の使い方は,sein に限らず,すべての動詞で同じです。sein は英語の be なので,英語の be という形がいつ使われるのかを考えると答えが分かります。すなわち「助動詞と一緒に使う」と「to 不定詞として使う」です。英語の場合は命令形にも be を使いますが,ドイツ語の不定形は命令形には使わないので,ドイツ語で不定形を使うのは助動詞構文の本動詞として使う場合(→S.28)と,英語の to不定詞に当たる zu 不定詞として使う場合(→S.42)です。