Lektion 5 格変化(2)

Lektion 4ではすべての格変化の基本となる定冠詞と不定冠詞の格変化のみを扱いましたが,この課では,その他の冠詞類の格変化を学びます。

定冠詞類の格変化

定冠詞類

dieser (英 this ),welcher (英 which ),jeder (英 every ),aller (英 all ),solcher (英 such ) などは定冠詞とほとんど同じ変化をするので「定冠詞類」と呼ばれます。辞書にはここに挙げた (er という語尾のついた) 男性1格の形で載っています。この –er の部分が性と格によって変化します

dieser の格変化

それでは定冠詞類の dieser の格変化を見てみましょう。

welcher, jeder, aller, solcherdieser と同じ変化です。基本的に定冠詞の格変化と同じですが,微妙に違うところがあるので,確認しておきましょう。

1) 中性の1・4格
 定冠詞は das でしたね。つまり語尾は –as です。ところが dieser の中性1・4格は dieses で,語尾は –es になります。

2) 女性・複数の1・4格
 定冠詞は die なので語尾は –ie です。でも dieser の女性・複数の1・4格は diese で,語尾は –e です。これは不定冠詞の女性1・4格 eine と同じ語尾です。

この2点以外は定冠詞の格変化と同じです。定冠詞と同様に,男性・中性の2格には –s または –es がつき,複数の3格には –n がつきます。(ただし複数形が –n または –s で終わる場合は,複数3格の –n はつけません)

 Dieses Buch ist interessant.  
  この本は面白いですよ。 (中性1格)
 Welche Tasche kaufen Sie?  
  どのバッグを買うのですか? (女性4格)

所有冠詞の格変化

所有冠詞

英語の my, your などに相当するのが所有冠詞で,不定冠詞と同じ変化ですが,不定冠詞と違って複数形もあります。

sein は「彼の」(英 his )と「それの」(英 its )です。

ihr は「彼女の」(英 her )と「彼らの」(英 their )です。「あなた(方)の」のIhr (2人称敬称Sieの所有冠詞) は,Sie と同様に文中でも常に大文字で書き始めますが,音声では「彼女の・彼らの」の ihr と区別できません。つまり人称代名詞が sie / Sie になる「彼女」「彼ら」「あなた(方)」の所有冠詞はどれも ihr /Ihr になります。

mein の格変化

それでは所有冠詞 mein の格変化を見てみましょう。

不定冠詞と全く同じ変化なので,男性1格と中性1・4格には語尾がありません (この表では印)。

不定冠詞には複数形がないので,複数形は定冠詞類と同じ変化になります。

不定冠詞と同様に,男性・中性の2格には –s または –es がつき,複数の3格には –n がつきます。(ただし複数形が –n または –s で終わる場合は,複数3格の –n はつけません)

他の所有冠詞もまったく同じ変化です。

 Sein Auto ist kaputt.  
  彼の車は壊れてます。 (中性1格)
 Kennen Sie meinen Bruder?  
  あなたは私の兄を知ってますか? (男性4格)

例文
 1格Unsere Uni ist groß.
    私たちの大学大きい。
 4格:Kennen Sie meinen Vater?
    あなたは私の父ご存知ですか?
 3格:Maria schenkt ihrer Mutter Blumen.
    マリアは彼女の母花を贈る。
 2格:Die Grammatik dieser Sprache ist einfach.
    この言語文法は簡単です。

所有冠詞のunserやeuerの–erは語尾ではないので注意して下さい。女性や複数の2格では,この後にさらに –er という語尾がつきます。
 Heute ist der Geburtstag unserer Mutter.  
 今日は私たちのお母さんの誕生日です。 (女性2格)

冠詞類の格変化のまとめ

一見,複雑で大変そうですが,定冠詞類と不定冠詞類の違いは上の表の印の2か所だけで,女性・複数の1・4格,および女性の2・3格と複数の2格が同じ形になり,男性と中性は2・3格が同じ形なので,まとめると次のように簡略化されます。

不定冠詞類の場合は(   )に入れた語尾はつきません。

冠詞類の格変化の覚え方

1番よく出てくるのは主語になる1格と直接目的語になる4格なので,まずは1格と4格を覚えましょう。

幸いなことにドイツ語は男性名詞以外は常に1格と4格が同じになるので,1格を全部と男性の4格を覚えれば大丈夫です。

余裕のある人は3格と2格も覚えておけば完璧ですが,それぞれの性の1格と4格をしっかり覚えておけば,それとは違う形が出てきたときに「あ,これは3格か2格だ!」と分かります。動詞の間接目的語「…に」になっていれば3格だし,名詞を後ろから修飾していれば2格です。

いずれにしても表の丸暗記はおすすめしません。暗記ばかりしているとドイツ語が嫌いになります。それよりもドイツ語をたくさん聞いて,たくさん読んで,ドイツ語に慣れて下さい。たくさんのドイツ語が脳にインプットされれば格は自然に分かるようになります。

定冠詞類と所有冠詞のQ&A

Q
定冠詞と定冠詞類の違いがいまいち分かりません。
A

「定冠詞類」とは,定冠詞とほとんど同じ変化をする冠詞です。具体的には dieser, welcher, jeder, aller, solcher で,全ての性と格で語尾があります。なお,定冠詞の中性1・4格の語尾は「-as」ですが,定冠詞類は「-es」になるので注意して下さい。

Q
Lektion5の格変化の表に diese Kinder という表現が出てきます。ドイツ語では後ろの語が複数でも dieser(英語のthis)を使えるのでしょうか。また,英語の these に対応する語はありますか?
A

ドイツ語では後ろの語が複数でも dieser が使えます。dieser は英語の thisthese の両方に当たると考えて下さい。

Q
英語では「人称代名詞の所有格」と呼ばれている my, your, … をドイツ語では「所有冠詞」と呼ぶのですか?
A

そうです。英語の my, your, … は無変化なので,「人称代名詞の所有格」と呼ぶことができますが,ドイツ語の mein, dein, … は後続する名詞の性・数・格に合わせて(不定冠詞と同じ)変化をするので,冠詞の一種と考える必要があります。